豊かな食を生み出す
大町の多様な自然

豊かな食を生み出す
大町の多様な自然

高瀬川は、槍ヶ岳、双六岳、三俣蓮華岳、野口五郎岳などの山々から水を集めながら、大町市を流れ下ります。渓谷には高瀬ダム、七倉ダム、大町ダムの堰き止めた湖面がエメラルドグリーンに光ります。

「ダムができる前は、高瀬川は洪水が起きる暴れ川で、大雨が降ると大きな石がゴロゴロ転がって、雨の中でも火花が散るのが見えました」。こう話すのは、北安中部漁業組合の組合長を務める長澤正彦さんです。

「44災」と呼ばれる1969(昭和44)年の水害後、ダムの整備が急がれ、1985(昭和60)年に最後の大町ダムが竣工すると、漁業会館が大町ダム下に置かれました。ここを拠点に組合員は川の保全や川魚の放流事業に取り組み、敷地内の養魚場でイワナを育てています。

「昔は祭事といえば鯉や川魚がよく食べられました」と長澤さん。漁協では時代に合わせてニジマスの養殖も手がけ、今はイワナが主。宮の森自然園そばにある大出養魚場から稚魚を運び込み、自然繁殖できる大きさまで育ててから放流します。

「うちが管轄しているのは、高瀬川とその支流の篭川、鹿島川。乳川と、木崎湖から流れる農具川です。農具川以外は真夏でもジュースやビールを1分でも入れておけば冷えてしまうような、それくらい冷たい川です」

イワナなど冷水性の淡水魚にとっては住みやすく、漁協が管轄する一帯は渓流釣りのメッカとなっています。

「心配なのは、鹿島槍の北峰の下にある雪渓が、ここ2、3年は早く消えてしまうこと。温暖化の影響で川の水量が減って、これまで流れのあったところに水がない。水温も上がって、今まで釣れていたところで魚が釣れないんです」

「昔は祭事といえば鯉や川魚がよく食べられました」と長澤さん。漁協では時代に合わせてニジマスの養殖も手がけ、今はイワナが主。宮の森自然園そばにある大出養魚場から稚魚を運び込み、自然繁殖できる大きさまで育ててから放流します。

「うちが管轄しているのは、高瀬川とその支流の篭川、鹿島川。乳川と、木崎湖から流れる農具川です。農具川以外は真夏でもジュースやビールを1分でも入れておけば冷えてしまうような、それくらい冷たい川です」

イワナなど冷水性の淡水魚にとっては住みやすく、漁協が管轄する一帯は渓流釣りのメッカとなっています。

「心配なのは、鹿島槍の北峰の下にある雪渓が、ここ2、3年は早く消えてしまうこと。温暖化の影響で川の水量が減って、これまで流れのあったところに水がない。水温も上がって、今まで釣れていたところで魚が釣れないんです」

自然の影響をもろに受けるイワナについて広く知ってもらおうと、漁業会館には「コヲミ平釣り堀センター」を併設し、組合員だけでなく一般客にも開放しています。

「イワナは釣るのが難しいので、ニジマス池もあります。お子さん連れの女性客が多いですよ。バーベキューもできます。魚をさばく、火をおこす、そういう機会にもなればいいなと思っています」

温暖化の影響が明らかな一方で、川では幻の魚と言われるカジカ類が自然繁殖で増えているとか。

「カジカは、ぱっと見はグロテスクだけど、じつはかわいい顔をしている。川底の大きな石をひっくり返すと、いっぱいいます。水生昆虫も豊富ですし、つりエサ取りを兼ねて、きめの細かい網を持ってきてください。ただし、うちの川は冷たいからね」

木崎湖畔で生まれ育った長澤正彦さん

「見える範囲の山には高校生までに登りました」。今も放流の際はイワナを背負って山に入る。
まもなく80歳とは思えぬ身のこなし

北安中部漁業協同組合事務所

公式サイトはこちら

住所  長野県大町市大町神栄町2763
電話 0261-22-7107(平日午前のみ)
料金 遊漁券は1,000円(現場券はプラス500円)
中学生以下および身体障がい者は無料。
つり堀、漁協組合事務所やコンビニなどで販売

コヲミ平養殖つり堀センター

公式サイトはこちら

住所 長野県大町市平高瀬入2112
電話 0261-22-8624
営業日時 9時30分~16時30分
4月中旬~9月末の土・日曜と祝日のみ。
5月連休とお盆休み前後は連続営業

(本文・データともに2023年12月末時点の内容)

木崎湖畔で生まれ育った長澤正彦さん

「見える範囲の山には高校生までに登りました」。今も放流の際はイワナを背負って山に入る。まもなく80歳とは思えぬ身のこなし

北安中部漁業協同組合事務所

公式サイトはこちら

住所  長野県大町市大町神栄町2763
電話 0261-22-7107
(平日午前のみ)
料金 遊漁券は1,000円
(現場券はプラス500円)
中学生以下および身体障がい者は無料。
つり堀、漁協組合事務所やコンビニなどで販売

コヲミ平養殖つり堀センター

公式サイトはこちら

住所 長野県大町市平高瀬入2112
電話 0261-22-8624
営業日時 9時30分~16時30分
4月中旬~9月末の土・日曜と祝日のみ。
5月連休とお盆休み前後は連続営業

(本文・データともに2023年12月末時点の内容)

山仕事創造舎は、都会からやってきた3人の男たちが2020(平成12)年に立ち上げました。彼らは大町の自然に魅せられて山仕事を生業と定め、仲間を得て企業組合を発足しました。放置されていた里山の手入れと将来を見据えた木材生産に取り組み、儲けることより山の再生を喜びとする、その姿は地域の信頼を集めていきます。

大町市を含む大北地域一帯の民有林は、山主ひとりあたりの所有面積が小さく、1ha未満が大半を占めます。山仕事創造舎では、こうした個人の山主からの依頼を受けて森林を整備しています。生産林(木材や薪、キノコなど林産物を生み出す森林のこと)としての山の価値を上げることと、それだけではない森林が持つさまざまな価値を上げることを目指しています。

今では30人いる従業員のほとんどが県外からの移住者です。橋本拓さんもそのひとり。現場ひと筋15年ほどを経て、4年前に代表を引き継ぎました。

「今、間伐中の山は、戦後の拡大造林で植えられたところ。湿った土地にはスギ、乾燥したところにはカラマツが植えられていることが多いのですが、大町は特定の樹種に適した土地ではないので、所有者によってさまざまな木が植えられています」

そして「それが大町の山の魅力」と橋本さんは言います。

「森を歩いて1日で10種以上のキノコが採れることもあります。それだけいろんな樹種があり、菌も虫も、鳥も動物も、いろんな生物が棲めるんです」

生物多様性の高い森林は、鹿にとっても魅力的で……。

「県外から視察に来た人が、地面が緑で覆われていることにびっくりするんですが、残念ながら大町でも鹿が増えています。鹿は下層の草木を食べ尽くすので、僕らのやってきたことが台無しになってしまう」

危機感をもって、この冬から山仕事の一環として狩猟にも取り組みはじめるとか。獲った鹿をどう食べるのか、ジビエについても考えをめぐらしています。

植生を豊かにするのは、生物多様性を高めるだけでなく、災害対策にも有効です。
「低層の草木がないと、大雨が降れば表土が流れ、山崩れなどの災害にもつながります。森林の地面はスポンジのようにフカフカで、驚くほどたくさんの水を蓄えます。そして地下水になって、湧き出る。こうした水源涵養の機能が一番重要です」

取材の最後に橋本さんは、間伐中の森林のすぐ下に広がる田んぼへ案内してくれました。稲刈りを終えた田を、紅葉の進む美しい森が縁取ります。
「僕はこの景色が気に入ってるんです。森が蓄えた水が、湧き出て田んぼや畑に使われる。水と森、農や食との関係をよく表しています」

「里山林は手を入れて、くり返し使ってこそ生きるんです。手入れした森は、どんどん環境が良くなりますよ」
誰もが気軽に森に足を向け、身近な森と共存できれば、森も人ももっと豊かになれるはず——大町ならそれが実現できるのだろうと思いを馳せました。

福島県出身の橋本さんは、音楽活動の拠点を東京から長野に移し、林業と出会った。
今も山仕事の傍ら「somafの音」として音楽活動を行う

企業組合 山仕事創造舎

公式サイトはこちら

住所  長野県大町市大町3300-1つくだビル3階
電話 0261-85-0940

(本文・データともに2023年12月末時点の内容)

福島県出身の橋本さんは、音楽活動の拠点を東京から長野に移し、林業と出会った。今も山仕事の傍ら「somafの音」として音楽活動を行う

企業組合 山仕事創造舎

公式サイトはこちら

住所  長野県大町市大町3300-1つくだビル3階
電話 0261-85-0940

(本文・データともに2023年12月末時点の内容)

取材・執筆 塚田結子(編集室いとぐち)
写真 平松マキ

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